Art of Flies

ブラックバスを考える」--21世紀の水辺環境と釣りのありかた--

(2001年2月24日(土)立教大学池袋キャンパス)


東京新聞 朝刊 2001年2月25日
ブラックバスは「悪玉」か 擁護派・駆除派初の討論
予想上回る1000人参加

全国の湖沼などで増殖を続けている肉食の外来魚・ブラックバスについて、擁護派と駆除派の双方が顔をそろえて考えをぶつけ合う初めての公開討論会が二十四日午後、東京・池袋の立教大学で開かれた。四時間近くに及んだ激論の中から見えてきたものは――。

討論会は、ブラックバスの繁殖が生態系に与える影響を危ぐしている市民団体「生物多様性研究会」(秋月岩魚代表)が「日本釣振興会」(事務局=東京都中央区)などに呼び掛けて実現した。アウトドアライターの天野礼子さんと、神奈川県立生命の星地球博物館・能瀬宏主任研究員がコーディネーターとなり擁護派からタレントの清水国明さんら三人、駆除派からも写真家の秋月代表ら三人がパネリストとして出席した。

教室からあふれモニター中継も

正反対の意見を持つ面々が一堂に会する初めての場。全国の漁協関係者やバス釣り愛好家らの強い関心を呼び聴衆は千人を超えた。大学側は五百人収容の教室に加え急きょ別の大教室も用意しモニターで実況中継もした。

討論は冒頭から“戦闘モード”。「バス釣りは既にアウトドアスポーツ」などと主張する清水さんらに、秋月さんが「あまりに幼稚であきれる」と応酬し、会場からは大きな拍手とやじ。

両派一気に激突かと思われたが「その前に」と、東京水産大学の水口憲哉助教授。「ブラックバスの現状に対する無理解が、現在の混乱を招いている。在来の魚が減っている原因がブラックバスであることを示す科学的なデータはない」と指摘すると、出席者から「在来種が減った背景は開発、水質汚染、乱獲の三つ」との援護射撃も出た。

一方の駆除派。水口説を認めながらも「琵琶湖でもブラックバスはよく捕獲され、胃袋を解剖すると、アユやワカサギなどの在来種がたくさん出てくる。データがないからといってバスの影響がないとは言い切れない。在来種が減っているという被害は全国で報告されている」と反論。ブラックバスの密放流も後を絶たない現状を挙げながら、釣り人のマナーにも言及した。

「バスを駆逐さえすればいいんだ、というなら議論のしようがない。バス釣りをしている子どもたちの教育にもならない」との意見に対し、「ブラックバスが他の在来種を食べて生きているということを教えなければ。キャッチアンドリリースだけを教えることが本当に教育か」と、教育論をめぐる応酬も。「バス釣りがこれだけ盛り上がったのは、カッコ良さをことさら強調するコマーシャリズムにも問題がある」といった意見も出た。

「問われるのは魚ではなく人」

会場の出席者を交えた質疑応答では「ブラックバスは大害魚。到底許せない。バス釣りで生計を立てればいいという意見があったが論外だ」と怒る人も出たが「物心ついたころからバス釣りを楽しんでいる者にも配慮して」との訴えも披露された。

秋月さんは「私たちも擁護する側に近い部分があることが分かった。自然を破壊せず元通りに復元する人間の側の努力が大事」と強調した。

出席者たちは討論にどんな印象を持ったのだろうか。

千葉県から来た二十年来のバス釣り愛好家は「問題はバスだけではない。ヘラブナが増えすぎて、昔の釣りができなくなっている漁場もある。ブラックバスを悪玉にしているだけでは根本的解決にならない。ダム建設などの公共事業が釣りに与える影響も話し合ってほしかった」。討論会を主宰した立教大学の濁川孝志教授は「問われているのは、魚ではなく実は人間の方だと分かった。今日の大きな収穫だ。今後はヘラブナやアユの保全をテーマに同様の公開討論を開きたい」と語った。

 


 24日のブラックバス公開討論で生物多様性研究会側のパネラーとして参加した鹿熊(かくま)と申します。勝手ながら、この会議室が最も私たちの真意の伝わりやすい場であると判断、今回の討論にいたるまでの経緯や、当日積み残した課題などについて補足させてください。

ほかのサイトも含め反響、感想のおおよそは理解しました。

自分たちの惚れ込んできたバス釣りという遊びが、反道徳的と指弾されることに戸惑う気持ちはよくわかります。サイトによってはマヌケだ揚げ足取りだ似非ナチュラリストだなどという罵倒もありましたが、あえてこういう討論を呼びかけ、パネラーとして壇上に出た以上、私はどんな批判も甘んじて受けたいと思います。

今回の討論会についてはさまざまな立場の方から感想や意見が寄せられています。もっとも多かったのは、表題にあった「21世紀のあり方」「ゾーニング」について未消化に終わったことに対する不満です。とくにバス釣り愛好家からそういう声が多く挙がっているということは、私個人として意外な発見でした。

この反響は、問題解決に向けてのひと筋の光明と考えます。皆さん「いったいこの事態はどうなってんだ、釣り業界さん」「なんで文句をいうんだよ、生物多様研とかいうやつら」という気持ちで、成りゆきを見に来たんでしょうね。会場からの鋭い視線にも、そんな真剣な思いが感じられました。

生物多様性研究会は「ゾーニングすら否定する全面駆除派」というニュアンスで伝えられることが多いのですが、私たちは、何がなんでも全面駆除・バス釣り禁止と唱えてきたわけではありません。ゾーニングの可能性については模索を続けたい。しかし、実現のためにはかなり高いハードルがいくつもあり、まず最初の条件は、違法放流の阻止にお題目でなく本気で取り組むこと、釣り人と釣り業界が状況を客観的に認識すること、そして過去の「暴走」に対し謙虚に反省することだと考えます。

これなくして、国民全体が納得できるバスのゾーニングはありえない、というのが私たちの一貫したスタンスです。

ところが現実はどうだったでしょうか。メーカーやバスプロ組織には、何年も前から「これを煽り続けることは非常に危険なのではないか」と意見を申し入れていましたが(個人の立場や取材などで)、「バスによる在来生物への影響は詳しく証明されていない」「ニーズがある」「ビジネスだから」「よそもやっている」と、聞き入れてもらえなかったのが実情です。

では、誰と話をすべきなのか。釣り人個人ではないはずです。多くのバス釣り愛好家は、むしろ「問題に巻き込まれてしまった気の毒なユーザー」だと思っています。私たちの会員にはフリーのジャーナリストも多いので、まずジャーナリスト同士でと、昨年夏「日本釣りジャーナリズム協議会」(会長・鈴木康友つり人社社長)に討論を申し入れましたが、「統一見解はない」という意味不明の理由で断られました。

結局、日本には健全な釣りジャーナリズムがほとんど機能していないことがわかったことを確認しただけで終わり、次にメーカーや流通業者、釣りマスコミ幹部などが要職のほとんどを占める財団法人・日本釣振興会に申し入れ、今回の公開討論開催の運びとなったわけです。

あの日、われわれが期待していたのは、日釣振側の潔い反省の言葉でした。ひとこと「釣り業界のとってきたこれまでの針路は誤りだった」といっていただければ、すんなりと「21世紀の釣りのあり方」「ゾーニングの可能性」というテーマに入って、ある程度、身のある話し合いができたのではないかと思います。

定義をめぐる議論などに時間がいたずらに費やされ、流れが対決的に展開したという批判に対しては、パネラーのひとりとして参加された方にお詫びしなければなりません。同時に私たちは、日釣振サイドが終始、本質的な議論を避ける姿勢をみせたこと、大人でも解決できないほど複雑な問題を背負ったバス釣りを、判断力の未熟な子供たちの「自然教育」に活用していきたいなどと主張し続けたことについて、強い憤りを感じています。週刊朝日2月16日号で東京水産大学の丸山隆さんがおっしゃったように、まさに「大人として、やってはいけない行為が含まれている」と思います。

また、会場との総合討論において、バス釣り愛好家側から一言、という際に挙手された方が、じつは進行打ち合わせのとき日釣振常務理事・高宮氏と一緒におられた、明らかな「関係者」であると思われ、事前に原稿を用意されていたフシがあることについても残念に思います。会場には、テレビや雑誌でおなじみの著名なバスプロの方もおみえになりました。あの場合はそういう方の意見がふさわしかったと思いますが、彼らの間からはとくに挙手はなかったように記憶します(この2点に関しては、もし事実関係に間違いがあった場合お詫びいたします)。

繰り返します。私たちは、この問題をなんとかソフトランディングさせたいのです。しかしそのためには、バス釣り愛好家にも納得していただかなければならない社会的制約がたくさんあるのです。

ゾーニングの第一義は、バスの有効利用ではなく在来生物保護のための施策であること。ゾーニングは、バス対漁業資源、バス対在来魚だけの問題ではなく、トンボやゲンゴロウなどたくさんの在来生物とのゾーニングでもあること。

それについて誰もが合意できればゾーニングの実現はありうるが、水産庁や日釣振の案には残念ながらこの大事な理念がなく「バス有効利用案」にすぎません。現在の水辺環境のおかれた現状を考えたとき、とうてい認められる案ではないので、私たちは日本魚類学会、日本蜻蛉学会、日本鞘翅学会とともに、さる2月9日、水産庁に反対の申し入れをしました。

これが、あの日私たちが会場に伝え、そして話し合いたかったことです。

私たちは、日ごろ自然の中で遊ばせてもらっている者として、あえて火中の栗を拾いました。しかしながら、この栗、正直言って持て余しております。釣りマスコミも日釣振もバスプロも真摯にバス問題を考えるつもりのないことがわかった現在、私たちはこれから、いったい誰と「ゾーニング」について話をしたらいいのでしょう。そもそもこの議論の義務はどちらの側にあるのでしょう。

ゾーニングの可能性について、顔や名前のよくわからないネット社会で議論をするつもりはありません。傍観者としてでなく、自ら本気で模索したいと考えている方は、まずメールにて本名と所属、電話番号、連絡の取れる時間帯を鹿熊勤(かくまつとむ)宛にお送りください。直に話しをしましょう。

鹿熊つとむ 

転載自由                         (02.28記)


2001/03/10 朝日新聞 朝刊
ブラックバス条件付き公認案
擁護・駆除で意見対立 移入種対策全体に影響

肉食性の外来魚ブラックバスの存在を条件付きで認めようという水産庁の「すみ分け」素案をめぐり、ブラックバス擁護派と駆除派の間で論議に火がついた。レジャ-や地域振興のために許容するのか。在来の生態系を守るために駆除を徹底すべきなのか。ブラックバス問題は、次の世代に伝えるべき「自然」の中身とは何なのかを問いかけている。

「バス釣は自然を知るための手段だ。駆除には憤りを感じる」と擁護派。駆除派は「バス類は環境破壊で追いつめられた在来淡水魚にとどめを刺す」と反論する。

■「すみ分け」で是非

2月24日、東京都内で、ブラックバスに関する公開討論会が開かれ、両派が激しい論議を交わした。五百人定員の教室に千人以上が押し寄せた。擁護派側の水口憲哉東京水産大助教授は、在来淡水魚が減った大きな要因として、ダム建設や河川工事など生息環境の改変を挙げ、「全部バスのせいにするのはおかしい」と主張した。

「すみ分け」素案は、水産庁が昨年十一月、自民党の水産基本政策小委員会に提出した。「閉鎖系水域の湖沼などに限る」との条件で外来魚の利用を認め、「それ以外の水域では駆除する」という内容だ。ブラックバス類のうち、渓流域など入り込む恐れがあるコクチバスは駆除し、オオクチバスをすみ分けの対象としている。

討論会では、バス類が在来生態系に何らかの影響を与えるという認識では双方一致した。しかし、「バス釣は生きがい」(擁護派)、「いったん在来種を滅ぼすと取り返しがつかない」(駆除派)と論議は平行線をたどった。

■学会が素案を批判

オオクチバスは北米原産の淡水魚で、全長30-50センチ。肉食性で小魚や甲殻類、水生昆虫などを食べる。全国内水面漁業組合連合会によると、一九七〇年代に一挙に広まり、今は四十四都府県から生息が報告されている。

バス類の河川湖沼への放流は、四十五都道府県が禁じている(ただし、芦ノ湖、河口湖、山中湖、西湖の四ケ所は知事が例外的に認めている)。駆除は、自治体や漁協などが主体となって各地で進められてきた。

三十五の学会・協会でつくる自然史学会連合は素案に反対し、在来生態系の保全を訴える要望書を国に出した。「政策転換によって全国に公認釣り場が設置されれば、(バスが)ほかの水域へ持出される危険性が増す」と述べている。一方 、釣り関連団体は公認釣り場の増設を求める署名運動を展開している。

水産庁は「素案はあくまでの論議のたたき台」と説明する。しかし、ブラックバスの条件付き公認は、これまでの駆除行政の流れを覆すことになる。

移入種規制を強化している国際的な動きにも逆行している。生物多様性条約第5回締約国会議が昨年決議した「外来種の中間原則指針」には、「初期の段階での撲滅、侵入前の予防措置」といった原則が盛り込まれた。

この流れの中で環境省は昨夏、移入種問題検討会を設置した。人間活動によって持ち込まれた生物をどう扱うべきかを探るのが目的だ。現在は移入種のリストアップ作業などを進めている段階で、ブラックバスなど個別の事例への提言は今後の課題という。

■影響予測しきれず

バス類に関する国内の研究は、十分とは言えない。近畿大細谷和海教授は「食性や生態などの断片的な調査ではなく、年間でどれぐらいエサを食べるかなど、生態系への影響を定量的に示す研究を進める必要がある」と指摘する。

在来の生態系への影響を客観的に示すには、アユやワカサギといった水産上の重要種に限らず、メダカやトンボの幼虫(ヤゴ)など水生動物への影響を幅広く調べる視点が必要だ。

一方で移入生物は、在来生態系にいったん入り込むとどんな影響を及ぼすか、短期的には予測しきれない可能性がある。巡り巡って人間社会にどんなしっぺ返しをもたらすかは未知数だ。「化学的な証明が十分でないとしても、それを移入生物を放置する口実にするべきでない」と細谷さんはいう。

移入種対策の中でもブラックバス問題には、地域振興や業界の利益といった要素が絡む難しさがある。この問題への国の対応は、移入種対策全体の方向性に大きな影響を与えるだろう。環境省を軸に集中的に論議を進めるべきだ。


水産庁の棲み分け案は、省内のバス愛好家が作成している(との情報)ため、バスの悪影響は軽視されている。

在来魚種が減ったのを、全部バスのせいにすのはおかしい。また、全部がバスのせいではない。しかし、バスはダムや河川工事に匹敵する影響を与えている。

バスも、ダムや河川工事、水質汚染等と同様に考えて、対応ほしい。

(omomo)